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【No.1091】錬金術師の美術館(3)…10月16日


ちょっと前に、この『コーネルの箱』という本が結構話題になったけれども、箱の中の詩的な宇宙というコンセプチュアル・アートで名を残したコーネル作品が小部屋にまとまってあった。

現代美術に力が入っているのは、入口横の外に置かれた巨大なフランク・ステラのオブジェで分かる。このフランク・ステラ(ミニマル・アートの旗手)の巨大なコレクションも天井の高い大きな部屋にぼんぼん設置されていた。一体どのようにして運ばれたのか。どういう梱包だったのか、どのように壁面に取り付けられたのかが知りたい。
毎日午後に学芸員による説明があるらしいので、それに参加すれば質問ができたかもしれない。しかし、残念ながらタイミングが悪く、それはできなかった。

フランク・ステラもそうだと思うが、コレクションに合わせた部屋を用意してあるのが贅沢だ。
何メートル×何メートルだろう。バーネット・ニューマンの赤と白だけで構成された壁紙のような「アンナの光」という作品があって、アンナはアーティストの母親の名なのだが、そこに光が十分回るよう、左右に大きな窓が設けられた部屋が用意されている。
マーク・ロスコの部屋というのもあるのだが、そこは作品貸し出しのため、閉鎖中であった。
貸出先は何と、ロンドンのテート・ブリテンである。
こちらのテートのプレスリリースにthe Kawamura Memorial Museum of Artの名が見られる。ロスコ展特集はこちらで案内されている。
これを見ると、美術館経営が単なる社会貢献でもオーナー経営者の道楽でもないことが分かる。これは、グローバル企業として実に大きな武器となる事業で、見事な企業戦略として機能する。
たとえば、私がここの印刷インキの営業担当だったとする。ヨーロッパで新規取引先を開拓するとして「うちは世界でシェアが一番で、品質は定評を得ている」という説明もできるわけだが、「今、テートでやっているマーク・ロスコの企画展にはうちのコレクションを貸し出している」という話ができる。ついでに、ロスコ展のポスターに使われている絵の色に近いDICの印刷チップを遊び心で見せれば良い。
営業というのは無論、事はこう簡単なものではないのだが、荒削りな流れとして捉えてもらうとして、こういう「売り」ができるのはヨーロッパでは強いですよ、きっと。芸術への投資という意味で敬意を持ってもらえるし、本業である「色」に関連した広がりを提示することができる。外堀から徐々に攻めて行く感じだ。
企業にはそれぞれ事業や伝統に基づく特徴があるだろうから、それに結びつけての広がりを用意しておくと、長い目で「芸は身を助く」的状況も出てきそうだ。もっとも、今の景気動向を見ていれば、企業が長く生き残ること自体が容易ではないのだが……。

川村記念美術館の「芸」の最たるものは、レンブラントのこの作品「広つば帽を被った男」を持っているということだろうか。
レンブラントはやはりヨーロッパの至宝の1つだ。私は日本で、息子に一級品を見せることができて大変に嬉しかった。17世紀に描かれた名画がすぐ目の前で見られるのだ。その存在感はものすごく、対峙すればただならぬオーラが伝わってくる。

他にも2年前の国立近代美術館におけるレオナール・フジタ展に出品されていた「アンナ・ド・ノワイユの肖像」(山岸涼子の漫画のキャラにどこか似ています)やらモネの睡蓮の1枚やら、ファンタジックな橋本関雪の六曲一双の屏風など素晴らしいものがいろいろあった。
今の時季だから展示されているのだと思われる池上秀敏の屏風「老秋」も見事。屏風に鹿が何頭か描かれているのだが、日本画の展示室に入っていった途端、少し落とした照明のなかに本当の鹿が何匹か遊んでいるような幻想を見られる。「日本画と自然」というところから、日本人の伝統的自然観が育んできたものについて考えさせられる。
それを引き摺りながら敷地の散策路の奥にある林を歩くと、悠久への思いにとらわれた。

中世の城を思わせるような領地の作り方に美術館の建物の形――そして、そこに置いてあるのが美術コレクションと錬金術の化学研究者たち。
そういう意味では、ユーモアのセンスも洒落ている。この空間のまとまりが大いなる表現になっていて素敵ですね。
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中村びわ

Author:中村びわ
2004年から2011年まで書いてきた
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http://biwa.blogtribe.org/を、
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