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【No.1057】西欧とアジアの潮目…8月2日


(本当は右端、フォースター『インドへの道』にしたかったけれども、書影ないんだ。
内容が同じトーンの本って、並べても違和感ないどころか、お互いにお互いを引き立てる装丁で驚かされることがしばしばだ)

アミタヴ・ゴーシュ『ガラスの宮殿』読書中。
すごい、すごすぎる。あまりにすごすぎて、途中でクールダウンしている。

何がすごいかというと、「西欧が植民地政策でいったい何をアジアに持ち込んだのか」ということを、自然と人びと、社会とを描いた壮大な場面のなかにぴしっと埋め込んでいることだ。始まってすぐにある、チークを運搬する象と象使いたち、その業務の管理の場面で、すでにして、そのような偉大な仕事をしている。
簡潔に述べてしまうと、「無為自然」「自然と共」に生きるアジアに、「自然を征服」して合理的に生きるという考え方を持ち込んだ――ということなのだが、ロレンス・ダレルやE・M・フォースター作品同様の風格を漂わせつつ、彼らが植民地政策の支配者側から描いたものを、被支配者側からきっちり返していると感じた。どちらも異文化の出合い、触れ合い、そして衝突、融合への模索という意識が底辺に流れていると言えるだろう。
余計なことも書いておくと、自然と格下の人間を服従しようという西欧中心の拡大政策・帝国主義の20世紀が引き起こした環境問題を、21世紀はアジア的な自然との共生思想で抑止していかなくてはなないという課題を負ってる。そのようにして100年、それにつづく100年を見ていくと、いたって現代人らしい思考を始められる。ただ、地球的規模で見るとき、環境政策に行き詰まった人間が燃料を失い、食べ物を失い、きれいな空気まで失って個体数を減らしていくのは生態系維持の上では必要とされることなのかもしれない。酸素をあまり必要としない生物が人間に代わって繁栄していくための準備なのかもしれない。ついに満を持してゴキブリの天下かっ!

ゴーシュは1956年生まれ。私とそう変わらない。尊敬!
すでに老境に達しているかのような円熟感がある。
カルカッタ生まれなのだが、デリー、オックスフォード、アレクサンドリアで学んだという。
この3ヶ所で学んだということで、アジア内部の異文化同士が出合い、さらにアジアと西欧が出合うというスケールの小説が可能になったのだ。オックスフォードでフォースター的視点、アククサンドリアでダレル的視点を獲得したのではないかという気にさせられる。そう単純なものでもなかろうが、各地で定点観測したことは無関係ではないだろう、この大作を生み出した素地に……。

『シャドウ・ラインズ』があまり話題にならなくて、とても残念に思っていた、でも、今はなくなった渋谷のブックファーストの海外文学売場で、一時期ずっと面陳にされていて感激して見ていた。本を知っている書店員さんがこの売り場にはいるな、と。
『シャドウ・ラインズ』は地味な版元から出ていたので、地位のそう固まっていないプロの書評家やライターたちはおそらく何かの提灯記事の方を優先したのだろうと解釈していた。そういう人たちは新潮社、河出書房新社、白水社、みすず書房、岩波書店などには「仕事をもらってお世話になりたい」ということで目配りを欠かさないだろう。「よいしょ、よいしょ」と書くけれども、『シャドウ・ラインズ』のような気概ある出版に対しては、よほどの余裕がないと手が回らないのよね。文芸評論という狭い狭い世界のなかでも、そのように帝国主義的状況が見て取れるような(笑)。
ゴーシュの評価は文学畑の人でなく、社会科学の視野もある人にきちんとしてもらいたいと思う。外交、ビジネス、国際貢献など、諸ジャンルで働く人たちにとって読み応えのあるものなので、「語りの素晴らしい大作」というような文学評価だけでは、作家の凄味が十分に語られていないと残念に感じている。

ポスコロ、ポスコロと言われる「ポストコロニアル」という言葉やら「アメリカ帝国主義」という言葉が便利に用いられて文学が語られてしまうようなことがあるようだが、現代のアメリカは「帝国主義的」であっても決して「帝国主義」とイコールではないわけだろうし、それと同じで、アジア・アフリカから出てくる文学を何でもかんでも「ポストコロニアル的視点で……」と述べるのはどうか。
「ポストコロニアル」から「南北問題(南北格差)」への移行を捉えながら、資本主義の行きすぎの帝国主義ではなく、資本主義の限界に行きつく自由主義を現象的に描いている文学を誰かがすっきり論じると良いのではないでしょうか。誰かやっているのかな。
まあ、私は評論ってほとんど興味ないのですが……。豊かな感覚で読んだものをクールな論理性で分析して、モーションを的確で美しい言葉で表現したような、そういう本の紹介者を探しています。
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中村びわ

Author:中村びわ
2004年から2011年まで書いてきた
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http://biwa.blogtribe.org/を、
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