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【No.1055】じごくに おちたいかたは どなたかな(3)…7月31日

「あったとさ あったとさ
ひろい のっぱら どまんなか」

調子の良い「おはやし」めいた言葉で展開していく『きょだいな きょだいな』というこの絵本は、読んでいて読み手が気持ちよくなっていく本だ。
『声に出して読みたい日本語』というような本がベストセラーになったけれども、古典には音読のリズムを意識したものが多く、そのリズムに身を委ねているとスッとする効果がある。それと同じ。1日10分でも、腹の底から大きな声を出して歌うと気持ち良いように、歌うように読むのも気持ち良い。
したがって、講談社の「おはなし隊」の事業でも、この絵本をプログラムに入れている人が多いようだ。
しかし、読み手が自分の気持ち良さを求めて、読みきかせの場を利用するのであれば、それは大きな勘違いというものである。その意味では、読みきかせは芸術活動ではなく、聞き手に奉仕する行為なのだから……。芸術は、不幸にしてその時代、その場所に鑑賞者がいなくても、芸術家が思う通りにやって良いことなのだと思う。

話がそれたが、この絵本が全国巡回バスの事業でもよく利用されているというのは、あとで知ったことで、私は子どもたちが一緒に「おはやし」を口にすれば、一方的に話を聞かされているストレスが和らぐと思って急きょ取り入れたのであった。

「きょだいな ピアノ」「きょだいな せっけん」「きょだいな でんわ」などが、このおはやしにより呼び出されて次々と登場するのだけれど、その電話のところで、ダイヤルのゼロゼロゼロ番を回すと、相手がこう答える。

「ふっ ふっ ふっ
こちらは じごくまち
えんまだいおうちょうの うけつけ
じごくに おちたいかたは どなたかな」

読みきかせって、街頭紙しばいのように大仰な「ふし」をつけ過ぎてしまうと、絵本の間近にいる子どもたちは引いてしまう。しかし、この日は、大人数で広い会場のイベントであったし、相手が幼児ではなく小学生なので、中島みゆきか小林幸子かというこぶし回しで思い切りやれそうだと思い、ここのネームの部分はドスを効かせてやってみた。
前の方に、少し読むたび、ひと言ふた言口にする元気で反応の良すぎる男の子たちがいたので、この場面にさしかかると、声を大きくして、いかにもおそろしげに「ふっ ふっ ふっ こちらは じごくまち」とやってみた。

しーん。

しかし、しばらくの間があって、その元気な男の子たちが、「やばいよ。やばいよ。これは、やばいよ」とこそこそ言っている。それを確認しながら「えんまだいおうちょうの うけつけ」。これですっかり黙ってしまった。
たたみかけるように「じごくに おちたいかたは どなたかな」

しーん。

保護者の方たちからは、「そんなに怖くしてしまうと、今夜、子どもたちが悪い夢でも見ないかしら」というような空気が伝わってこないでもないぐらい、しーん。
主催者やスポンサーの視察の方たちからも、「怖がらせたら、本の楽しさを伝えるという主旨に反しますね。どう収拾してくれるのか」というような空気が伝わってこないでもないぐらい、しーん。

しばらく間を置いて、先ほど来と同様、「あったとさ あったとさ」を喚起する合図を行い、みんなで弱々しい声で、それを口にしたときの安心感。
集団のわらべ唄遊びで、急に鬼がわっと襲いかかってくる――長谷川摂子さんの文章は、そのような日本的な、交感神経に訴え、それを成長させる、大切な要素を含んでいる。言う間でもなく、子どもの心身の成長に必要な要素だ。

大人に怖い話を聞かせてもらうとか、手をついで丸くなって唄っていたのが、「わっ」という掛け声とともにほどけて一目散に走り出すとか、十分に遊びを体験しておかないと、おそらく予想できない年齢で、予想できない場面に、「わっ」とあふれ出してしまうのだよね……、邪気が。
ごっこ遊びって大切です。
本は生身の遊びには及ばない部分もある。しかし、恐怖、挫折、苦悩、寂寥、悔悟、屈辱など、自分が味わうマイナスの感情を、別のケースで表現してくれているから、自分のマイナス感情を客観視できる能力を育ててくれる。そこにつなげていく助けをするのが、こうした活動に片道1時間自転車こいで参加する意味ということになるのかな。
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中村びわ

Author:中村びわ
2004年から2011年まで書いてきた
「本のシャワーにさらす肌」
http://biwa.blogtribe.org/を、
こちらに引き継ぎます。

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