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【No.1393】カノンの水先人

「カノンの水先人」という見出しで書こうとして、「しかし、これ、傲慢な題じゃないか。文学の現人神のような沼野充義先生を『水先人』にたとえるということは、自分を大型客船かタンカーの船長に奉るみたいなことになる。失礼千万な話!」と、ちらと思う。やはり、沼野先生が控えめに書いているように、

しかし、全体像を把握しきれないほど膨大な数の本がごちゃごちゃと積み重ねられてしまったのが現代ですから、それを前にして「あなたは自由ですよ」と言われてもとほうにくれる人は多いに違いない。そこで文学探索の道筋のようなものを少しでもお見せすることもまた必要ではないかという気がします。私がこのところ目指しているのも、結局その道案内なんですね。(『世界は文学でできている』P100)

そう、「文学って面白そうだけれど、どういう人が、どういうものを、どう書いているの」と思っている人には、実にありがたい道案内。
ちなみにカノンというのは、上の引用部分の1ページ前に、「ある時代に読むべき価値ある古典と見なされているものの総体」と定義されている。

どうも私は読了本について書くと、読み終わって興奮した勢いでダラダラした長文が「あしひきの山鳥の尾のしだり尾」のようになるので、きょうは2冊同時に読み進めていて、半分ずつぐらいのところにさしかかった連続講義録を紹介してみることにする。

左の『世界は文学でできている』は、JPICという私がお世話になっている財団法人が主催、古典新訳文庫で波に乗りまくる光文社が共催、東大文学部現代文芸論研究室が協賛で行われた「<新・世界文学入門>沼野教授と読む世界の日本、日本の世界」という連続講演を元に再構成されたもの。
こちらのコンテンツは、
(1)越境文学の冒険…リービ英雄×沼野充義[2009年11月/光文社]
(2)国境も時代も飛び越えて…平野啓一郎×沼野充義[2010年1月/京大会館]
(3)「Jブンガク」への招待…ロバート・キャンベル(さっきBSプレミアムで芭蕉の番組に出てた)×沼野充義[2010年2月/神戸商工貿易センタービル]
(4)詩を読む、詩を聴く…飯野友幸×沼野充義[2009年11月/東京大学]
(5)現代日本に甦るドストエフスキー…亀山郁夫×沼野充義[2010年5月/東京国立博物館平成館大講堂]
私は(1)と(5)を生で聴いている。

右の『やっぱり世界は文学でできている』には、紀伊國屋書店とリブロ池袋によるイベント二つも含まれているが、他の四つがやはり同じ主催・共催・協賛で、コンテンツは下記の通り。
(1)あらためて考えるドストエフスキー…亀山郁夫×沼野充義[2012年3月/紀伊國屋ホール]
(2)「美しいフランス語」の行方…野崎歓×沼野充義[2012年4月/池袋コミュニティ・カレッジ]
(3)「世界文学」の始まりとしてのアメリカ…都甲幸治×沼野充義[2012年10月/東大本郷法文2号館]
(4)太宰とドストエフスキーに感じる同じもの…綿矢りさ×沼野充義[2012年9月/光文社]
(5)日本語で書く中国の心…楊逸×沼野充義[2012年11月/明治大学紫紺館]
(6)母語の外に出る旅…多和田葉子×沼野充義[2013年2月/東大本郷法文2号館]
私は(6)だけ生で聴いた。

当初、これから文学読みの海へ漕ぎ出そうという中高生向けに企画された連続講義は、私の今働いている世界でも同様、結果として「中高年」で大にぎわい的状況を呈し、この先にも続いている。
先般は、谷川俊太郎氏と、谷川氏(ん?「谷川詩」と言うと簡潔)作品を中国語に訳している詩人・田原氏を招いての講義が新宿は安与ホールで催されたので聴いてきた。

正直、文学の門前にいて、ここに出てくる固有名詞のほとんどが分からないという人には、もしかすると十分に楽しめない内容かもしれない。
ただ、夏目漱石作品を一つとしてきちんと読み通したことのない人であっても、その名前ぐらいは聞いたことがあるだろうし、日本文学を代表する作家というぐらいは知っていると思うから、彼が英語のとてもよくできた人であり、漢籍の素養深く、漢詩が作れたため中国語もできた人なのだというエピソード(『世界は文学でできている』P16)には「へえ」という発見があるのではないか。
そういう種類のエピソードがいくつも出てくるから、学歴の高いタレントさんたちが難しい漢字問題を解いたり、地歴の知識を披露している番組を見る時間があったら、たまには、こういう刺激をいっぱいもらえる本を読むのもいいんじゃないかと思いますですよ。

「文学が何に資するか」という価値を明確にする必要があるかどうかは知らないけれど、いろいろな作家が書いた多様な社会や、多様な人びとが頭の中にいくつかあると、
「自分が直面している、この情けない問題は、あの小説のあの設定に似てやしないか」
「この小悪人は、あの悪漢に比べたら、かわいそうなぐらい小者かも」
「この人の思いやりは、数年前に読んだ作品の聖女を思わせる」
「子どもの無邪気さは、こんな世界の果てでも共通するものがあるのだなあ」
などと、現実とフィクションの往還ができる。その面白さがしょぼかった一日を豊かなものに変えたり、へこんだ気持ちを浮揚させたり、明日への元気をもたらしてくれる、私の場合。
だから、文学と沼野先生に感謝!!!
そして、作家や翻訳者、出版人、情報をもたらしてくれる読書人たちにも感謝!!!

(ごにょごにょ…単位互換制度があるようなので、「現代文芸論研究室で何か講義を受けさせてもらって2単位♪」と甘いことを考えついたのだが、どうも専攻が違うと、よっぽどの理由づけや意欲でもない限り難しいみたいだ。ムリだろうなあ)
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中村びわ

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