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【No.1392】冬の子どもの本


12月中のおはなし会で利用した大型絵本を図書館に返しに行った時、『楽しいスケート遠足』という小学中級以上向け童話の背が目に入り、借りてきて読んだ。お話を書いたオランダ出身の作家が挿し絵も描いていて、その味わい深い絵が、15ミリ幅の背の部分にも見えるようレイアウトされている。棚差しだったが十分なアッピール。

オランダの国じゅうの運河や水路が凍りつくと、村から村へ町から町へ、スケートやそりで移動できる「氷の道」ができる。だから人々は便利に行き来するし、テントを張った飲食店も出る。少し昔の時代のうらやましい楽しみの世界だ。

原書は1934年にアメリカで出て、ニューベリー賞銀メダルに輝く。そして、しばらく入手しにくい状態が続いて、1994年に復刊。それを訳者のふなとさんが、不思議な縁で訳すことになったという。
ふなとさんは、この童話翻訳ののち、2011年に絵本『ピートのスケートレース』を訳しているが、それもオランダの運河でのスケートの話。ただし、そちらはナチス迫害を避けるため、ユダヤ人の子を主人公が庇護してくれる人の元へ送り届けるという社会性強い内容であった。

『楽しいスケート遠足』はエルスト村の16人の子どもたちが、先生に引率されてスケート遠足に出かけた日の話で、スケートシーズンならではの風物や、行く先々で出会った人々との交流、いくつか起こる事件などが書かれている。随所に美しいフルカラーの挿し絵、いきいきした動きのモノクロのさし絵があしらわれ、それが助けとなって、外国の古い時代の物珍しい体験が、まるで自分もしてきた体験のように感じられる。

氷が割れ、子どもの一人が冷たい水の中に落ちてしまう。それを近隣の親切な人が助けてくれ、そこから子どもたちに予期せぬ素敵な寄り道が待ち受ける。
辿り着いた町の小学校の生徒たちが出てきて、雪合戦が始まる。
せっかく来たのだからと立ち寄った15世紀の教会を見学しているうち、4人の子が置き去りになってしまう。
結構大変な事件が続けて起こるのだけれど、一日だけの遠足が子どもたちにとって何と大きく素晴らしい体験かと感心させられ、それを提案してサポートした先生の言動にも興味は惹きつけられる。

ちょっとした知識も得る。
木靴が水に強いこと、中にワラを詰めて防寒仕様にすること。オランダ国歌が世界で一番古い国歌だということ。
中身について書き過ぎた気がしないでもないが、読んでみないと題名にある通りの「楽しい」は実感できないだろうな。
オランダと言えば、過去に読んだチューリップ・バブルの本、小野伸二が活躍したサッカーリーグ、日本との交流の歴史、バッハ・コレギウム・ジャパンの鈴木雅明氏一家がデルフト近くに住んでいること等、いろいろ思い出せる。

私の滞在歴はトランジットのため、アムステルダムで一泊半日のみ。一ヶ所だけ観光できる時間があってゴッホ美術館に行った。泊まった民宿は実に快適でコストパフォーマンス高く、朝食が充実していた。しかし、夕飯のために入った運河沿いのレストランで危ない目に遭う。
一人で店をやっていたエジプト人男性が他のカップル客などを追い払い、「準備中」の札を入口に出し、窓のシェードを下げ、食事している私の横に座ったのである。少し会話して、それでつまり国籍を知ったのだが、ただならぬ雰囲気にて、うまくかわして逃げてきた。学生時代のこと。これも「体験」には違いない。

ついでに、この本を読むきっかけとなったおはなし会用の大型絵本、今度使う予定のものも含めて3冊紹介しておく。私にとって定番で頼りになる絵本たちである。


『もりのおふろ』は、くりかえし話で幼児にとても読みやすい。ライオンがからだを洗っていると、ぞうがやってきたので背中を流してもらう、ぞうが洗っているとワニが来るので背中を流してもらう、という具合に続いていく。「ごしごし しゅっしゅ」という擬音でリズミカルに読み進める。「おゆを ざぶーん」という画面、「おふろへ どぼーん」という画面の愉快さ。そして「ごくらく ごくらく」で結ぶ着地の安心感が気に入っている。

『にんじんとごぼうとだいこん』は再話者が書いていないから編集部で文章を用意したのか、それでも妙な言い回しがなく、日本民話のこなれた再話になっていて、『もりのおふろ』同様、もう何回か、おはなし会の最後に読んでいる。すっきりくっきりしていてお茶目な和歌山静子さんの絵が良い。
これもお風呂ネタで、「冬だからあったまる」「冬においしい根菜、鍋やおせちで大活躍」という理由で冬季に使いやすい。おふろのあったまり方で、根菜それぞれの色が決まったという、ほら話。

『でんしゃでいこうでんしゃでかえろう』は、雪景色から始まるので冬の会に有難い。トンネルを抜けるたび、野原、谷、海など、冬景色が変わっていく。そして菜の花ばたけで終わる。ところが、終わったところから「かえろう」ということで、今めくってきたページを元に辿っていける。つまり、前からも後ろからも読めるユニークな絵本。
ずっと前、小さいお子さんが「前で見ていたら、本の中に入っちゃった」と言っていた。
須賀敦子の著作に『本に読まれて』という題名があるが、絵本や挿し絵が多い童話は『本に飲みこまれて』『本に吸いこまれて』が容易にできてしまうのだ。それもまた、「体験」。
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ジャンル : 本・雑誌

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中村びわ

Author:中村びわ
2004年から2011年まで書いてきた
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http://biwa.blogtribe.org/を、
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