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【No.1385】「教養」の基礎なす読みもの群のつづき

『消えた王子』の登場人物に、バーネットは次のようなことを言わせている。その部分でも本を置いて、しばらく考えごとをした。

「人の一生がだれからも惜しまれないとき、その最期は孤独だ」ロリスタンはぽっつり言った。「当人が自尊心をうしなってしまった場合、のこされた者はその魂にたいする同情を惜しむべきではない――そのように孤独な魂にたいして、せめても何らかの餞(はなむけ)をささげたいからね」最後の一語は、いささかの間をおいてつけくわえられたのだった。(上巻P175)

社交的だったにもかかわらず孤独だった父の晩年や死に様を思い出しながら、私自身の終焉がどういう感じなのかを想像してみる。
明るい性格だったにせよ、暗い影を引きずるような性格だったにせよ、思いのほか長生きをしてしまえば、仲の良かった人たちが去り行き、その後は誰しも孤独なものかとも思える。名声を得た人とて、子孫に恵まれた人とて、いざ死に向かうときは一人きり。
それを考えれば、惜しまれようと惜しまれまいと、誰にとっても等しい死の孤独というものに納得できる。ましてや、意識が混濁し、混濁する前の人格とは異なる人格となってしまい、自分で自分の孤独さが認識できなかったら、どうなのか。

ただ、バーネットがここで伝えたいのは、死の孤独についてなのではなく、人から惜しまれない死を迎えないよう、人のために生きていく生の勧めなのだろうということは感じ取れる。


『南から来た男』は、好評だった『八月の暑さのなかで』の姉妹編だ。「ホラー短編集2」となっているので、遠からず3冊め、4冊めと出ていくことになるのだろう。全部で11編で、読んだことがあったのは半分ほど。
ポー(これは翻訳者・金原瑞人の創作も入った翻案もの)、ダール、О・ヘンリー、ウェルズ、デ・ラ・メア、ブラックウッド、ボウエン、ブラッドベリ、スティーブンソン、ホワイト(これは知らない作家)といった名手がずらり揃ったところに、これも名手と言えば名手、アメリカ文学の大御所ウィリアム・フォークナーによる『エミリーにバラを一輪』が並んでいる。
ここを入口にフォークナーの難解とも言われる大作群に分け入っていけるかどうかと言えば、その可能性は低そうだが、翻訳者と編集者が、どういうやりとりをしながら所収作品を決め込んでいったのか、「若い人の内面に種を蒔いておきたい」という意思の力が感じられる。とても良い作品集だ。
『エミリーにバラを一輪』については、あとがきにも書かれていて、話者が女性。丁寧な語り口調で訳されている点が意欲的。NHKの大河ドラマで、女性アナウンサーや女優が過去に何回か「○○なので、ございます」「○○ということで、ございました」というようなナレーションをしていた。それに似て、古くからの語り伝えらしい効果がしっかり出せている。

『シェイクスピア名言集』は、シェイクスピアをラフに捉えたいというニーズで読んで、本質的な部分もつかんでしまえる贅沢な本。見開きごとに一つ、シェイクスピア作品中の名言が取り上げられていて、それをシェイクスピア研究の第一人者・小田島雄志が解説してくれているわけだから……。
表紙のイラストは和田誠だが、本文のどことなく愛らしいカットが、おかべりか。そういうところにも手を抜かず本作りをしているところが「岩波クオリティ」だと嬉しかった。
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