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【No.1377】ほどよく殺せ!



昨年末に読んで楽しんだミステリ『解錠師』スティーヴ・ハミルトン(ハヤカワ・ミステリ文庫)についてのメモ。
楽しんだものの若干不満も残った。そこのところを、各方面のひんしゅくを買わない程度に気をつけ、ひとくさり記録する。

「このミス」って「このミステリーがすごい!」の略なのかと、今しがた帯を見て認識した。「このミステリがおもしろい!」かと思っていた。情けない。「ミステリ」でなく「ミステリー」と音引くのね、とも確認できた。
2012年の「このミス」と「週刊文春ミステリーベスト10」の両方の海外部門で第1位を獲得した超話題作で、2011年に、向かって右の赤い装丁のハヤカワ・ミステリ版で出たものが、一年後の12月に左側の、どこかヤング・アダルト小説を匂わせるジャケットで文庫版として発売されたばかり。

子どもの後ろ姿が描かれているけど、「主人公マイク=物語の語り手」は、そのぐらいの年齢の時に大きなショックを受けて話すことができなくなってしまったのだ。他者との対話機会が少なくなった分、言葉は彼の内面で豊かにはぐくまれていく。
そして絵で上手に表現する力も伸ばし、ひょんなことから鍵なしで錠前を開けられる力も身につけ、後者の能力で「金庫破り」として実践を積んでいく。
エキセントリックなマイクに惹かれる女の子が登場し、恋愛の行方にも引き摺られる青春小説的な要素もあり。

原題はThe Lock Artistと言うが、Lockされているものがいくつか出てきて、それが「どうなるの?」「開くの、開かないの?」と、読者をサスペンスとしてそそり続ける。
まずロックされているのは頑丈な錠や金庫で、それらの仕組みについての記述が半端なく、偏執狂とも言いたくなるほど。相当興奮させられた。そういう独創性がミステリというジャンルの中で高く評価されたのだろう、きっと。

他にロックされているのは、マイクが経験した、声が出せなくなるほどの衝撃を受けた出来事。つまり、彼の過去。そして、友だちの少ないマイクの前に現れた、とびっきり魅力的な少女のハート。鍵を開けるのが得意なマイクが、彼同様、心に覆いをかぶせている女の子を見事開放できるのかどうかにも興味しんしん。

確かに、こういった設定だけ考えると、YA(ヤング・アダルト)読者層も意識し、ジャケットのデザインをそれ風にすれば、読者が広がりそうだ。
実際、私が手に取ったのも、子どもが出てくる小説のようなので、中高生向けとして人に薦められる内容なのかどうか(JPIC読書アドバイザーという立場でw)を確かめたい気持ちもあった。
しかし、結論から言うと、読書推進関係の大人が中高生に正面切って薦める本としてはNGだと思う。
そういうところに携わる人たちにしてみれば、YAジャンルに求めるのは「向日性」である。もしくは、それを感じ取られるよう筋が通っているかどうかというポイントだ。

『解錠師』のラストは「ああ、良かった」と思える感じ良いものに仕上がっている。けれど、上記のYAとしての適性という点は別に置いておくにしても、ラストに至るまでに、むやみに血が流れ過ぎの気がした。「やれるだけやっちまえ」的な、刺激強い商業映画のようなところがある。
果たして、このストーリー展開で、あそこまで血は流されなくてはならないものだろうか。そこが「筋が通っているかどうか」という疑問として残る。
加えて、8歳だったマイクが体験した出来事も、相当にむごい。「中高生の時ではなく、大人になってから読んだ方がいいかもね」という気にさせられてしまう。実際には、このぐらいのものなら、小学高学年で読む子もいると思うけれど……。

「YA層にも」という欲は出さず、赤い表紙の方のイメージで、いくつものロックを解いていくマイクに、不思議な世界を見させてもらうミステリとして読者を増やしていくのが良いように思えた。






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