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【No.1346】「これって、あれだよね」みたいな。


今月初めに買って読んで、「面白いなあ」と思ったものの、その面白さがどういうものなのかを表す力量が自分にはないと感じ、そのままにしていた。

面白さの一つは、いろいろな「実験」「実験的なこと」がされていて、一部が分かったような気になれるところ。

例えば、「道化師」は『道化師をごらん!』という小説、蝶はコレクション趣味、物語に出てくる「友幸友幸」という名前は『ロリータ』のハンバート・ハンバートのよう、それにモントルー・パレス・ホテルとくれば、かの人の終焉の地。おまけに物語の最後の方に、当のその人らしき老人が出てきて、詰めチェスの話をしている。文章にいろいろな言葉の仕掛けが意識されているのも、かの人の強烈な文体の特徴。

名前を英語で綴れば、頭もしっぽも「V」のウラジミール・ナボコフ。ロシアから亡命したベルリンで物を書いていた時代には、「V・シーリン」というペンネームであったし、著書には必ず「ヴェーラに」という風に捧げる言葉があり、その妻の名の頭文字も「V」。
だから、『道化師の蝶』のジャケットの蝶の羽のモザイクを見ていると、「VVV……」とVで埋め尽くされているようにも見えてくる。
版元の講談社がサービスよく、文芸雑誌「群像」に掲載した沼野充義ら3人の創作合評をアップしてくれていて、そこに、言語実験としての小説の出来が評価されている。
言語の面でどういう実験がされているかについて、ウリポのレーモン・クノーやら、その影響下に書かれた筒井康隆『残像に口紅を』を読んで知ってはいても、他にどういうものがあるのか、ほとんど知らない。
現代小説で、文字のレイアウトに凝ったタイポグラフィを用いたものは何冊か読んでいるが、この『道化師の蝶』は、タイポグラフィではなく、書かれたテキストの内容自体がなかなかの実験になっているようなのだ。

実験がどうなされているのか、よく分からない。しかし、ひゅうっと感じたのは、吉田戦車『伝染るんです。』の単行本第1巻。装丁家の祖父江慎氏と仕掛けたワナだ。
『道化師の蝶』には、例えば途方もないデブっちょキャラ男性で書かれていた設定が、後になって女性になってしまうという、言ってみれば「破綻」がある。そういうところに着目すると、わざと誤植を混ぜたり、わざと乱丁本にしたりという『伝染るんです。』の実験の方が分かりやすく挑戦的で、「前衛」などという代物ではなく自然体でラディカルだよねとも思えてくる。
言語にこだわって、ああいうワナを仕掛けられたら、確かに文学も「前衛」で守っていてどうすると問われず、過激に攻めているなと感心されることだろう。

『伝染るんです。』の装丁コンセプトについては、こちらのサイトに詳しい。
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