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【No.1148】絵本の表現のつづき…5月6日

第二次世界大戦中、ロサンゼルス近郊のマンザール日系人収容所で写真家の東洋宮武がレンズを持ち込み、収容された仲間と作った手製のカメラで人々の生活ぶりを密かに撮影していた。【No.1147】で表紙を貼った『東洋おじさんのカメラ』は、その事実を伝えるドキュメンタリー映画の公開に合わせ、タイアップ企画として出された絵本のようである。

絵本の文を担当したのは、ドキュメンタリー映画の監督であるすずきじゅんいち氏、そして細君の榊原るみさん。彼女が読みきかせのボランティアを長くしているということで、絵本の形でも東洋宮武を紹介しようということになったのだと思う。
映画の方は現在、渋谷区恵比寿の東京都写真美術館のホールで公開中で、今月22日まで上演の予定。
写美の案内はこちら
東洋宮武についてのサイトは こちら

東洋はロサンゼルスのリトルトーキョーで人気の写真スタジオを経営していた有名人で、アンセル・アダムスとも親交があったという。それもあって、密かに利用していたカメラが収容所所長の知るところとなったとき、アダムス他の写真家たちの勧めで、所長は東洋を収容所の正式カメラマンに起用した。
すでに米国国籍を取得していた日系人もここには収容されたし、のちに米国人としてヨーロッパ戦線に出征することになる二世たちも収容されていたようである。

そういった複雑な事情はさて置き、絵本は「戦争中にどういうことがあったのか」ということを子どもたちに分かり易く伝えるために、「砂漠の収容所に迷い込んだ捨て猫」という狂言回しを立て、その猫の視点から、自分にやさしくしてくれた東洋おじさんのことを表現するというお話になっている。
絵本や童話を作るときに、このように動物の視点を借りる、子どもの視点を借りるという方法で、大人社会の問題を紹介していくというのはオーソドックスな方法であるが、この絵本でも、それがうまく機能している。
絵の方は、絵本を手がけるのは初めてというタブロー画家が描いているが、端正な鉛筆画の力作で、時間をかけて丁寧に制作された感じで、とても好感が持てる。

「何だ、これ?」と思わせる前衛的な表現も、それはそれで評価されるべき冒険的な価値はあるが、やはり読者対象が限られてしまうし、できるだけ多くの人に何かを訴えようというときには相応しくない。
その意味で『なぜ戦争はよくないか』のアリス・ウォーカーの表現にも、絵の表現にも、何か惜しいようなものを感じる。比較はどうかとも思うが、『なぜ戦争はよくないか』に比べると、『東洋おじさんのカメラ』は、多くの子どもや大人たちに視覚的なことから入って東洋宮武のことを是非とも知ってもらいたいのだという意欲が伝わってくる。
いろいろな立場や境遇で戦争という事態を迎えた人がいて、その時代をどのようにしのいだか、生きたかという問題提起は、「戦争の悲劇を次の世代に伝える」ための多様な方法のなかの、1つの貴重な方法である。伝承のための分かり易いツールがまた1つ増えたことには、大いなる価値があると思う。
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中村びわ

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2004年から2011年まで書いてきた
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