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【No.1143】パレスチナの美しい文学…4月15日

河出書房新社が1978年に出版した「現代アラブ小説全集」中の1冊。
1988年に新装新版で出したものを、今年になって再度、新装新版で出した。

(書影リンク先に中村の紹介文あり
様々な要素で、作品と私自身を響き合わせるようにして書いてみています)

訳者である奴田原睦明氏の略歴解説によれば、カナファーニーはPLOの急進勢力であるPFLP(パレスチナ解放人民戦線)のスポークスマンを務めた。テロも辞さなかった一派である。
1948年、イスラエル建国の直前に起こったデイルヤーシン村虐殺事件の衝撃で、少なくないパレスチナ人が難民となったのだが、そこにカナファーニーの家族も含まれていたというのである。その日、ちょうど12歳になったカナファーニーは、生涯二度と再び、自らの誕生日を祝わなかったという。
しかし、祝えなくなった誕生日をそう何回も迎えることができたわけではない。彼は36歳のときに車に仕掛けられたダイナマイトで姪と共に爆死してしまう。
ネット上の情報によると、この爆弾は、特殊部隊モサドが仕掛けたのだとイスラエルが公式に認めたらしい。

イスラエル軍がパレスチナ自治区ガザに侵攻したことに触れた日本経済新聞のコラムで、この本のことが紹介されたようで、どうもそれで復刊したらしい。

作家の経歴から、多少過激な内容を覚悟していたけれども、素晴らしい文学作品であった。
キャリアを積んで50歳、60歳となった円熟の作家が書いたような小説にも思える。柔和に話を進めて行く部分と、緊張感を持たせて話を進めて行く部分のメリハリがきいている。
パレスチナの論理やパレスチナの立場を書きながらも、自身はそこに踏み留まることなく、イスラエル側にいる人びとの誠意を覗かせるようにして書くことにより、「和平」「異文化共存」の可能性を示しているのである。
そこに震えが来るような美しさを感じ、圧倒された。

3年前にも、同じ「現代アラブ小説全集」に入っているナジーブ・マフフーズ『バイナル・カスライン』という大作が新装復刊された。
それもずっと気になっていて今に至るまで読めていないが、遠からず読んでみたい。
今世紀はサッカー界は「アフリカの世紀」かもしれない。文学界は「アジアの世紀」になるのかもしれないなあ、などと思う。世紀末まで生きて見届けることはできないだろうけれども……。

日本の今の小説は、「グローバル化だから無国籍風だよね」というように流れていると感じるが、グローバル化の背景があるからこそ、独自性ある価値観を打ち出すことが大切である。
翻訳家というと、外国のものを日本語に訳す人がほとんどだけれど、案外、戦国武将と忍者、帝と間者の関係などが書かれた時代物を海外へ向けて紹介していくと(英訳と日本語訳では異なる英語力が要るのは自明だろうが)、魅力的に映り、インパクトがあるのではないだろうか。いや、そういう売けそうだという狙いばかりではなく、伝統的価値観、伝統的世界観を矜持として交流の場に立つために……。

[参照]
パレスチナ情報センター
同センターによるパレスチナ関連書籍の紹介ページ
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中村びわ

Author:中村びわ
2004年から2011年まで書いてきた
「本のシャワーにさらす肌」
http://biwa.blogtribe.org/を、
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