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【No.1030】構築するそばから…6月9日

アンナ・カヴァン『氷』――250ページほどなので、すぐ読めそうな気になっていたが、とてもとても……。ほぼ万人が楽しめるアーヴィング作品の次に読む本ではないわな。読者を選ぶ小説だ。

展開されるイメージを我が物とするために、書き手のビジョンに同調しようとして読むのだが、あるいはそのような読みが間違っているのかもしれない。うまい立ち位置が見付からないまま、作者のイメージを追っかけていき、引き摺られていくだけの情けないありさま。

かなり来ているよな、この小説……と思えたのは、構築するそばから崩落していくこの感じ。それがやはりカフカ的なのだ。某独裁国家における不条理な出来事、どこへ辿り着くか分からない展開といった表層的な物語の類似ではなく、その「構築するそばからの崩落」が、読む者の内面に与えるI miss it.という感傷。日本語に直すとどうなるのだ。寂寥感? ニュアンスが少し違う気がする。寂寥よりも、もう少し軽いタッチ。

時節柄、「構築するそばからの崩落」という評価はこそっと行っておくのが良いような空気。
ましてや、「人の滅びを美しく書いてある小説」という自分の好みのことは控えておいた方が良い空気。

カバー袖の「冷たい熱狂を引き起こした」という紹介文の表現がいい。私も過去に何回か、このような矛盾する言い回しを使ったことがある。すごくよく分かる表現で、ビリビリ来る。
さっきまで、麻酔を打たれた唇がしばらく元に戻らず(合法ですよ、もちろん。歯科治療である)、覚め始めるとビリビリしていたのだが、「冷たい熱狂」って、どこか麻薬中毒的な感じをよく捉えている気がして……。
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中村びわ

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2004年から2011年まで書いてきた
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