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【No.1107】子どもと大人を成長させる童話…11月26日&27日


本人はそう呼ばれることを歓迎していなかったようなのだが、紹介するときに使いやすいフレーズ「イタリアのカフカ」――ブッツァーティの童話を読んだ。
光文社古典新訳文庫『神を見た犬』が評判になったからなのか、福音館書店が1987年刊で休版になっていた本を文庫(児童書の文庫は新書版を横に伸ばしたようなサイズ)入りさせてサルベージ。
『シチリアを征服したクマ王国の物語』という作品なのだが、旧版はただいまYahoo!オークションで「21900円なら即決」ということで出品されております。近日中にリンクは切れてしまうと思うけど、ご興味の向きはこちらでご確認を……。

文庫は小さいから絵が見にくいということもあろうけれども、21900円ねえ。ジョン・ファウルズやナボコフの絶版本みたいな値付けだ。
私も欲している絶版本は何冊かあるが、まだしばらく生きるつもりでいるので、長期戦で待ちますよ。こういう復刊のチャンスを……。何も研究者で論文を書くから「今すぐ必要」というわけではないのだし……。
一般的な文学作品で出してもいいと思えるのはせいぜい5000円ぐらいかなあ(主婦感覚)。ナボコフ『ロシア文学講義』も、定価の半額の1500円ぐらいで入手できた。流通から消えていった本は、図書館で持っている場合もあるし……。
ただ、以前、ある本を世田谷の保存庫から出してもらったら、破損がひどくカバーが修繕テープでガッチガチに固められていて、マジで手を怪我したことがあった。軍手をはめて読むような無粋な小説でもないので、残念に感じつつ、返却してしまったことがある。
でも、あの小説、騒いでいる人はほとんどいないので、出ないだろうなあ。
池澤個人選の世界文学全集からももれてしまっていた。河出書房から出ていた本だったような……。

余計な話になってしまったが、『シチリアを征服したクマ王国の物語』は、終盤に来て、為政者たる王の賢明な意思決定にじんとくるものがあった。
愛らしい童話だけれども、小さな公国に割拠されていたイタリアの歴史から出てきた物語なのだろうと思い、1945年に出版という事実とあいまって、このお話に込められたものの深さに思い及ばすと、またじんとくるものがあった。
表紙で確認できるが、この絵もブッツァーティ自身の手になるもので、画家としても有名だったらしい。

「子どもの本」という一群のかたまりがあって、そこには絵本や辞典、探偵小説や科学読み物、伝記など多彩なジャンルが含まれる。「童話」もその仲間には違いない。
世界的な本の背番号であるISDNや図書館で使われるNDCコードなどの分類は、そういう考え方でなされている(と思う。司書資格を持っているわけでなし、よく知らないのだ、実は)。でも、童話というのは、がぶりと言ってしまえば「向日性」があることが望ましいが、「ミステリ」「SF」「ライトノベル」といったジャンルと同列に並べられても良いのだろうなという気がしている。
つまり作家が何かを表現しようとしたときに、それをミステリとして書くか、SFで書くかという選択があると思うが、それを童話で書くという選択もあり得るということだ。
ブッツァーティ作品に関して、『神を見た犬』を読んだときにそう感じた。それで私は『シチリアを征服したクマ王国の物語』は今年になって初めて知ったのだけれど、「ああ、やはり、この人、童話でも書いているのだ」と感じた。
一般小説ばかり書いていた人が「子ども向け」と構えてしまうと、ときに大江健三郎のようなことになってしまうのだけれど、あるいは立松和平とか――どういうことかが説明しにくいので察してくだしゃんせ――ブッツァーティは、特に対象が子どもだと強い意識を持たずにスイッチしてしまえているという感じ。

繊細な言葉で丁寧に説明する集中力がきょう(27日)はないのだが、前にある童話作家に対して言ったことがある。「童話」というのは「持っている」人でないと書けないのだと思う。「何を」を説明するのがとても難しい。
「才能」と片付けると安直だ。安直と言うより、言いたいこととはニュアンスが異なる。
「感性」とした方が、より近づく。この感性は、少年少女時代のものとして封印してしまっていたものを再び目覚めさせることで、持っていない人も持てるようになるかもしれない。子どもたち相手に読みきかせをしているときも時々、持つことが必要だと感じる。それを発揮して子どもたちと一緒に本を楽しめたとき、パスポートを手にできたと感じられることがある。
子どもの王国へ行けるパスポート。
おそらく、それを持とうとすることが、大人になっても子どもらしい成長を止めないことにつながるのではないか。
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中村びわ

Author:中村びわ
2004年から2011年まで書いてきた
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http://biwa.blogtribe.org/を、
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