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【No.1417】『じゃがいも畑』から考える「子どもの貧困」




貧困で食うや食わず、夜勤のある仕事で家計を支えるシングルマザーに育てられている
三人きょうだいの話。

2014年7月に厚生労働省より発表された、2012年の17歳以下の子どもの貧困率は16.3%と
過去最高。ひとり親世帯での貧困率は54.6%という日本の現実を考えれば、切なさは絵本の
中の世界に閉じ込められているわけではない。
私の身の回りにも今、そういう話はあり、これまでにいくつも、そういう話は聞いてきた。
親が眠りにつく子どもに絵本を読んであげられないという家庭は、たくさんある。

しっかり者の長女メイベルの提案で、母が夜勤に出かけた後、末っ子エディを荷車に乗せ、
きょうだいはじゃがいも畑に出かけていく。
ありったけの洋服を重ね着しなくては、こごえてしまう真冬の月夜の晩。
「ケニーさんとこの畑のじゃがいもをくさらせてはいけない」というのが長女の言いわけ。

弟が立ったまま眠ってしまったのを潮時に、きょうだいは帰宅。
ところが、何としたこと。
台所のテーブルで選別を始めると、ほとんどが石ころだったのだ。
さらに悪いことに、帰宅した母親が、きょうだいのしでかしたことを見つけ、
取ってきたじゃがいもを返しに行くよう告げる。

長男のジャックの視点から書かれる話は、ここに至って希望のかけらもないような
展開になるわけだけど、後半、一つずつ、大切に物語は紡がれていく。

畑から石ころを取り除いてくれたことにケニーさんは喜んでくれる。
どうやら、おみやげにじゃがいもをくれたようで、帰宅したきょうだいは
じゃがいも料理にありつける。
何より素晴らしいのは、きょうだいが母親の愛情の深さを感じられることで、
この子たちが、将来いかなる苦境に陥っても力を合わせ、前向きに生きていくの
だろうなという気にさせられることだ。

しかし、現実の貧困は、決して物語のようにうまく解決し切れやしない。
そこをどうしていくのか、絵本を閉じた私たちは考えていかないといけない。
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テーマ : 絵本
ジャンル : 本・雑誌

【No.1416】『ちいさいわたし』に期待したかったこと




子どもの成長・発達を願う優しいまなざしが満ちていて、すごく素敵な絵本。
とても好きな絵本。

でも、どうも最後の2画面ほどが、もっと大化けさせられたのではないか、
自分が編集担当者であったなら「もっと何か」と食い下がって再考を促し、
展開と結びに大化けを願ったと考えてしまう。
出てから1年半が経とうとしているけれど、再読するたび同じことを考えてしまう。

小さな女の子の内省的な世界が描かれる。
犬をひとりじゃ散歩につれていけない、外出先で大きな声であいさつできない、
祖母が送ってくれた服が小さい、真っ暗な中では眠れないなど、できないことが
いくつかあって、「でも、いつかはできるようになる」「いまは、そのとちゅう」という
感じの思いが表現される。

何もかも「いつか」とは思っているけれど、友だち関係でステップアップが
感じられるエピソードが一つ出てくる。
「いつか」がすぐに実現できて、そこが、とても良い。

結びに至る部分に物足りなさがあるのは、「わたし どんなこに なるのかな」と
いうのが、絵で描かれた子よりもお姉さんっぽい言い回しだと感じるからかな。
それに続く「わかんない」という否定的表現が、遠くを夢見るような言葉であって
ほしかったのかな。
分析してしまうと難しくつまらなくなる。

時間をかけてもう少し寝かせながら作った本ならば、そこにしっくりする表現があるとき、
空から降ってくる、きっと。
絵本づくりには、そういう時間のかけ方が理想。

テーマ : 絵本
ジャンル : 本・雑誌

【No.1415】4つの国に誕生した赤ちゃんの1年DVD「ベイビーズ」

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(2013/04/27)
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今週はじめ、科研費を得て新たに始動したという、とある幼児教育研究会の企画で、こちらのフランス映画(2010)「ベイビーズ」のDVD上映会があった。
大学教員、高校教諭、保育士、看護師、大学院生、学部生など、ごく限られた人数だったが、「赤ちゃん」に吸い寄せられた人たちが集まり、いっしょに笑いながら、いっしょに感じ入りながらの79分の鑑賞。

4つの国に誕生した赤ちゃんの「育ち」の様子を1年間撮り続けたドキュメンタリー。
左から(と言っても、このリンク、プレビューと違って大きくアップされないじゃん)
アメリカのハティ
日本のマリ
ナミビアのポニジャオ
モンゴルのバヤルジャルガル

住居の形、服、食事、日中の過ごし方、眠り方、あやされ方、自然環境、機械化、遊びなどが文化によってまるで違う4人の赤ちゃんがおすわりできるようになり、はいはいをして、つかまり立ちに続いてひとりで歩けるようになるまでを生活に入り込んで記録したユニークな作品。

終わってから、皆で感想をシェア。
私は、
(1)どの子も哺乳類なんだな、動物っぽいなと思えたこと。それがみんな同じように大きくなり、みんな立ち上がれて良かったね(でも、ここには描かれていないけど、成長や発達が違う子もいるんだよねとは考えた)。
(2)ナミビアやモンゴルの映像を見ていて、砂だらけになったり泥水を飲んだり、さまざまなものを口に入れても、みんな勝手に育っていくのだと感じたこと。日本のお母さんたちなら、すぐにもやめさせたいと思うようなことに無頓着な文化もある。
などについて触れた。

帰りに顔見知りの高校の先生と話しながら駅へ向かう。
家庭科の時間で、赤ちゃんには触れ合う機会がないという中高生あたりに、いかに保育を教えるかに苦労するかという話を聞いたり、「赤ちゃんの笑顔がたくさん見られて、いやされましたね」などと語り合った。

テーマ : DVDで見た映画
ジャンル : 映画

【No.1414】実力派作家と細密画家のコラボ絵本『もりへぞろぞろ』




「実力派ベテラン作家の村田喜代子さんが絵本の初テクスト、それはチェックしなきゃ……、
しかも自然界を虫の眼で描くような絵本作家の近藤薫美子さん♪」
と期待いっぱい開いた絵本。
 
いのししが病気になって、山にすむいろいろな動物たちが集まって心配しているうち、
誰かが「山の奥の暗い森に行けば病気が治る」とお年寄りに聞いたことを思い出す。
こわいものが出るのはいやだけれど、病気の仲間を治したいし、皆で行くなら大丈夫と、
山じゅうの動物たちがぞろぞろ向かうことになる。
具合の悪い仲間を手作りのたんかにのせたり、おんぶしたりしながら……。

着いてみたところが、やはり真っ暗でこわい森。
でも、冷たい水、冷たい風で、みんなどんどん元気になっていく。

奇をてらわないシンプルな展開。
刈り込まれて抑制のきいた文だからこそ、画家の想像力が自由な翼で飛び回れたに違いない。
凝りに凝った描き込みは何回見ても愉快で楽しいし、何回見ても見尽くしたとは言えないだろう。
よくもまあ、こんな凝った絵が描けたものだ。

テーマ : 絵本
ジャンル : 本・雑誌

プロフィール

中村びわ

Author:中村びわ
2004年から2011年まで書いてきた
「本のシャワーにさらす肌」
http://biwa.blogtribe.org/を、
こちらに引き継ぎます。

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