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【No.1400】好きな作家


「物語るにはまだ早い」というブログタイトルで表したいことは多義。
「ここで書くエピソードは、物語れるほど、まだ十分に熟していない」ということであり、つまり、そのような調子で「まとまりのないこと、落ちのないことなどをだらだらっと書くよ」という意味もあり、そして「物語るしかなくなってしまうまでに自分は至っていない」というリアル充実志向でもある。

まだ他にも、指し示せる意味はあったかもしれない。

「秘するが花の事どもを物語って生業としなくとも、別の方法で食べていけるよ」という意地もあるかもしれない。
物語を生業とすることが卑しいと言いたいわけではない。けれども、それはあまりに潔い覚悟の要る営為だろう。

カレン・ブリクセンという本名を秘匿し、イサク・ディネセンという男名でゴシック物語を編んでデビューした作家は、デンマーク生まれ。スウェーデン貴族と結婚しアフリカで農園経営を始めるも行き詰まり、それにより結婚も破綻する。
父親が梅毒に苦しんで自殺したというのに、夫にも同じ病を移され、その症状に悩まされる。
農園経営の巻き返しを女手一つで試みるも、資金繰りがつかなくなり断念。すべての財産を手放しての帰国を控えた矢先、良き理解者であった愛人を突然の飛行機事故で失う。

失意のうちに帰国したカレンは、弟に期限付きの庇護を願い出て、物書きで身を立てることを決意する。この『ピサへの道』、そして『夢みる人びと』から成る『七つのゴシック物語』を書き上げる。

彼女が「物語る」に至るには、十二分な絶望があった。そしてそれでも、享けた生は最後の瞬間まで全うしていくものなのだという希望の灯は消えず、アフリカで愛した人に乞われながら紡いだ物語を本にしたのである。生き延びるために……。まさに生き延びる手段とするために。
覚悟して書かれた物語は、19世紀を時代設定とした20世紀文学の見事な成果で、アメリカ文学の巨匠トルーマン・カポーティは、イサク・ディネセンのような作家こそノーベル賞にふさわしいと述べたという。

小説好きに評価高いディネセンは、『アフリカの日々』という回想の物語で世界文学の高みを極めた。
熱く駆け抜けた日々も、ずたずたに引き裂かれた運命も、奇蹟のような体験も感銘も、そこでは作りごとの物語と等しく、しなやかでロバストな知性の統制下、どこか遠い国、遠い時代の神話のように語られる。
あたかも彼女自身の生が、はるか昔から口承されてきた物語の一部でしかないかのように……。


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テーマ : 読んだ本の感想等
ジャンル : 小説・文学

プロフィール

Author:中村びわ
2004年から2011年まで書いてきた
「本のシャワーにさらす肌」
http://biwa.blogtribe.org/を、
こちらに引き継ぎます。

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