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【No.1419】砂漠の羊飼いたちの暮らし『ハナンのヒツジが生まれたよ』


「知識」という形ではなくて、絵を見る楽しさ、お話に吸い込まれる喜びと共にいろいろなことを教えてくれるのが絵本だと思っている。
この絵本も、ほんの10~15分ほどで、ヨルダンの砂漠で暮らすベドウィンたちのヒツジを飼う暮らし、テントでの移動、ラマダーン(イスラム暦9月=断食月)、いけにえ祭り(イスラム暦12月の大祭)の言い伝え等を分かりやすく教えてくれる。

画家の小林豊氏は『せかいいちうつくしいぼくの村』『ぼくの村にサーカスがきた』等、中東やアジアの人々を描いた絵本で定評のある日本画家。
今回は、JICAのシニアボランティアとしてヨルダン・ハシミテ王国のアカバ、カラクに派遣されたご主人といっしょに現地で各1年ずつ暮らした井上夕香さんと組み、井上さんが死海で出会った、ハナンという12歳の少女のために描かれたお話に絵をつけた。

そうか、ヒツジを飼うのだから、砂漠でも野原があるんだ。
砂嵐は「ハムシーン」というのか。それが、河原や人々にこういう被害をもたらすのか、それは「ジン」という魔物に絡んでいるのか。
ヒツジの餌が干ばつでなくなってしまうと、ホブズというものが代用になるのか。
といった具合に、「へえ」「へえ」と新たな世界に連れて行ってくれる。

ヒツジ年なので、取り上げてみました。

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テーマ : 絵本
ジャンル : 本・雑誌

【No.1418】海と時代を超えた友情『エルトゥールル号の遭難』


新年早々、すてきな絵本に会えた(左の書影)。
NPO法人国際共生促進機構の近藤圭一郎氏が企画した、1890年の紀伊大島に始まるトルコと日本の強い絆物語。記録文献を参考に、寮美千子さんが創作したお話である。
(「共生」や「絆」という表現を好まない人も、その中身に案内するための単なる記号だと受け止めてほしいもの)。

大日本帝国陸軍中将であった皇族・小松宮彰仁親王が、軍事視察の帰途イスタンブールに立ち寄った1887年、たいそう厚いもてなしをオスマン帝国に受けた。それを聞いた明治天皇がアブデュルハミトⅡ世に漆器と勲章を献呈。
オスマン帝国はその答礼のため、600人近くもの軍人を乗せた軍艦に親書と勲章を託す。
この航海には、寄港地でオスマン帝国海軍の威力を見せ、アジア各地のイスラム教徒を結束させる目的もあった。

選ばれた船は、13世紀末にオスマン帝国を興した初代オスマンⅠ世の父の名がつけられた「エルトゥールル」で、蒸気機関を備えた美しい帆船。だが、進水式から航海の機会がなかった同船は老朽化しており、長旅に不安もあった。

開通20年のスエズ運河で座礁、ボンベイからセイロンへ向かう途中に浸水、サイゴン出航ののち嵐に巻き込まれ、という具合に、修理のための長い寄港、過重な経費等、思わぬ困難を抱えながら、艦は出航より11ヶ月後にようよう横浜に到着する。

鹿鳴館に宿泊し、軍楽隊で民間人と交流する乗組員らはちょっとしたブームを巻き起こすものの、帰国への出航を控えた矢先、コレラに見舞われる。何人かの犠牲者を出し、遺体埋葬で文化間トラブルが生じ、ようやく出航が可能になった時には、すでに台風シーズンが到来していた。
本国からの要請もあり、やむなく出航したエルトゥールル号を待ち受けていたのは暴風雨。
紀伊半島先端の大島、樫野崎の灯台を視野に入れながら、艦は遭難する。
木造船は岩礁で砕け、乗組員の多くが波に呑まれ、戻らぬ人となった。

しかし、何とか岸に泳ぎ着いた者、岸に打ち上げられた者たちが、灯台守や地元の漁師、村人たちによって庇護、救出される。重傷を負った者もいたが、村人たちの素早い判断、親身の看護が69人の生存を可能にしたのである。
貧しい漁村であったが村人たちは非常食を供出し、集められるだけの着物をかき集め、裸同然だった乗組員に着せて、神戸港へと送り出す。

ここからの後日談が、海と共に生きてきた人たちの歴史を、さらに神話のようにする。
村人たちは遺体を捜索し、発見した亡骸を埋葬し続けた。打ち上げられた遺品はオスマン帝国海軍へ送還されていったという。墓地は祖先のものと同様手入れされ、守られ、それはいつしか現大島小学校の子どもたちの仕事となり、戦時中を経て今に至る。

物語は、エルトゥールル号に宿った霊的存在の一人称として語られる。

ロシアのバルチック艦隊を破ったので親日、私が30年前、イスタンブールを旅した折には島田陽子が出演したドラマ「将軍」が人気で、日本の映像他の評判がいいから親日かと思っていたが、実はトルコ人の親日ぶりは、この一件によるのだという。
イラン-イラク戦争中、フセインがイラン上空を飛ぶ飛行機撃墜の宣言を出した折、イランから出立できなくなった200人の日本人を救うため、在イランのトルコ大使がトルコから救援機を出すことを申し出た。
「エルトゥールル号の遭難時のご恩返し」というのが彼の弁であった。

密度高い話ゆえ、絵本と言っても絵の部分は限られている。大判の童話に挿し絵がついた風のバランスとなっている。
絵はスクラッチ・イラストレーションで独自の世界を切り拓いている磯良一さんの手になる。小さな磁石の捨てカットにも、意味と情感を込めた丁寧な仕事ぶり。見入って飽きない象徴性の高いモチーフと色彩である。

これまで何回か、高校生が読書会を行って、その成果をボードにまとめる「どくしょ甲子園」の予備審査を手伝わせてもらっているが、そういうところでも大いに読まれてほしい一冊だ。

『海の翼』の方は、同じ出来事を扱った一般書。

テーマ : 絵本
ジャンル : 本・雑誌

【No.1417】『じゃがいも畑』から考える「子どもの貧困」




貧困で食うや食わず、夜勤のある仕事で家計を支えるシングルマザーに育てられている
三人きょうだいの話。

2014年7月に厚生労働省より発表された、2012年の17歳以下の子どもの貧困率は16.3%と
過去最高。ひとり親世帯での貧困率は54.6%という日本の現実を考えれば、切なさは絵本の
中の世界に閉じ込められているわけではない。
私の身の回りにも今、そういう話はあり、これまでにいくつも、そういう話は聞いてきた。
親が眠りにつく子どもに絵本を読んであげられないという家庭は、たくさんある。

しっかり者の長女メイベルの提案で、母が夜勤に出かけた後、末っ子エディを荷車に乗せ、
きょうだいはじゃがいも畑に出かけていく。
ありったけの洋服を重ね着しなくては、こごえてしまう真冬の月夜の晩。
「ケニーさんとこの畑のじゃがいもをくさらせてはいけない」というのが長女の言いわけ。

弟が立ったまま眠ってしまったのを潮時に、きょうだいは帰宅。
ところが、何としたこと。
台所のテーブルで選別を始めると、ほとんどが石ころだったのだ。
さらに悪いことに、帰宅した母親が、きょうだいのしでかしたことを見つけ、
取ってきたじゃがいもを返しに行くよう告げる。

長男のジャックの視点から書かれる話は、ここに至って希望のかけらもないような
展開になるわけだけど、後半、一つずつ、大切に物語は紡がれていく。

畑から石ころを取り除いてくれたことにケニーさんは喜んでくれる。
どうやら、おみやげにじゃがいもをくれたようで、帰宅したきょうだいは
じゃがいも料理にありつける。
何より素晴らしいのは、きょうだいが母親の愛情の深さを感じられることで、
この子たちが、将来いかなる苦境に陥っても力を合わせ、前向きに生きていくの
だろうなという気にさせられることだ。

しかし、現実の貧困は、決して物語のようにうまく解決し切れやしない。
そこをどうしていくのか、絵本を閉じた私たちは考えていかないといけない。

テーマ : 絵本
ジャンル : 本・雑誌

【No.1416】『ちいさいわたし』に期待したかったこと




子どもの成長・発達を願う優しいまなざしが満ちていて、すごく素敵な絵本。
とても好きな絵本。

でも、どうも最後の2画面ほどが、もっと大化けさせられたのではないか、
自分が編集担当者であったなら「もっと何か」と食い下がって再考を促し、
展開と結びに大化けを願ったと考えてしまう。
出てから1年半が経とうとしているけれど、再読するたび同じことを考えてしまう。

小さな女の子の内省的な世界が描かれる。
犬をひとりじゃ散歩につれていけない、外出先で大きな声であいさつできない、
祖母が送ってくれた服が小さい、真っ暗な中では眠れないなど、できないことが
いくつかあって、「でも、いつかはできるようになる」「いまは、そのとちゅう」という
感じの思いが表現される。

何もかも「いつか」とは思っているけれど、友だち関係でステップアップが
感じられるエピソードが一つ出てくる。
「いつか」がすぐに実現できて、そこが、とても良い。

結びに至る部分に物足りなさがあるのは、「わたし どんなこに なるのかな」と
いうのが、絵で描かれた子よりもお姉さんっぽい言い回しだと感じるからかな。
それに続く「わかんない」という否定的表現が、遠くを夢見るような言葉であって
ほしかったのかな。
分析してしまうと難しくつまらなくなる。

時間をかけてもう少し寝かせながら作った本ならば、そこにしっくりする表現があるとき、
空から降ってくる、きっと。
絵本づくりには、そういう時間のかけ方が理想。

テーマ : 絵本
ジャンル : 本・雑誌

【No.1414】実力派作家と細密画家のコラボ絵本『もりへぞろぞろ』




「実力派ベテラン作家の村田喜代子さんが絵本の初テクスト、それはチェックしなきゃ……、
しかも自然界を虫の眼で描くような絵本作家の近藤薫美子さん♪」
と期待いっぱい開いた絵本。
 
いのししが病気になって、山にすむいろいろな動物たちが集まって心配しているうち、
誰かが「山の奥の暗い森に行けば病気が治る」とお年寄りに聞いたことを思い出す。
こわいものが出るのはいやだけれど、病気の仲間を治したいし、皆で行くなら大丈夫と、
山じゅうの動物たちがぞろぞろ向かうことになる。
具合の悪い仲間を手作りのたんかにのせたり、おんぶしたりしながら……。

着いてみたところが、やはり真っ暗でこわい森。
でも、冷たい水、冷たい風で、みんなどんどん元気になっていく。

奇をてらわないシンプルな展開。
刈り込まれて抑制のきいた文だからこそ、画家の想像力が自由な翼で飛び回れたに違いない。
凝りに凝った描き込みは何回見ても愉快で楽しいし、何回見ても見尽くしたとは言えないだろう。
よくもまあ、こんな凝った絵が描けたものだ。

テーマ : 絵本
ジャンル : 本・雑誌

プロフィール

Author:中村びわ
2004年から2011年まで書いてきた
「本のシャワーにさらす肌」
http://biwa.blogtribe.org/を、
こちらに引き継ぎます。

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